第3章『故郷を大事に思うこころ』
藤原美津子: これだけ海外でご活躍されていますが、通訳の方はいらっしゃるのですか。
小杉社長: 当社には、スペイン語や英語などいろいろな言語を話せる人間がいますから、その時によってついて来る社員がちがいます。
今、海外向けに日本庭園の見方を紹介する本を書いているのですが、これからも海外に日本庭園を作っていこうと思っています。日本という存在を海外の人に知っていただきたいので。今の日本は、景気が悪いということを言い訳にして、工夫することが少なくなってきていると思うのです。
藤原美津子: せっかく、外国の方に日本の精神などが見直されつつあるのに。東日本大震災のような大惨事が起きても、暴動も略奪もほとんど起こらない。すごい国です。その力はどこから出てきているのでしょうか。その一つが、かつての大家族制であったりとか・・・
小杉社長: それと教育ですね。旧ソ連の独立国ですが、国民は皆いい人ばかりです。また教育にも力を入れ始めたので、将来が楽しみの国もあります
藤原美津子: 昔から繋がってきた伝統を蘇らせれば、日本人の立ち直りも早いのではないかと思っています。 実は、地元の産土の神様が、地方に行けば行くほど廃れています。こんなに由緒のある神社が、なぜこれほど寂れているのかと思うくらいですが、残念ながらそういうところは、街全体にも元気がありません。
子供の頃から地元の神社にお世話になっているはずですから、もっと産土の神社を活性化する呼びかけをしたいと思っています。
小杉社長が総代を務めていらっしゃる北澤八幡様は、実際に神社も街も発展しているという相関関係にあるように思えてならないのですが。
対談
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小杉造園株式会社代表取締役 社長小杉左岐様対談
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小杉社長: 実は、北澤八幡様とある寺院は隣同士なのですが、神社のお賽銭は相変わらず玉(硬貨)なのですね。私は、紙幣を入れるようにしていますが、つかえてしまう。それに比べて、お寺の戒名代は何百万とする。だから神社と寺院では裕福さが全然違うのです。
藤原美津子: 私も、神社のお賽銭箱に入れるのが硬貨だというのが、いまどき絶対おかしいと思っているのですね。
講演会などでは「いくらご縁があるからといって、そんな値段で神様にお願いすること自体おかしいと思いませんか」とお話しています。
毎日行く人ならいざしらず、月に一回や二回のしかお参りされない方であればなおさらと話をすると、実際にそうされるのですね。ですから、伝えると伝えないとでは全然違うのではないかと思っています。
小杉社長: 私どもの矢島宮司はとても素晴らしい人です。おどしにもめげず祭礼の露店を一般人にしましたので、町民も安心して祭を楽しんでいます。また、氏子であっても、寄付などとんでもないという方もいらっしゃいますしね。宮司は大変です。
藤原美津子: 主人がよく申していたのは「生まれた時は神様のところに行くのに、亡くなった時になぜきちんとお礼をさせていただかないのか」ということでした。
昔は実際、亡くなると「穢れ」と言われて、神前に参るのは避けていました。でも、むしろ親しい家族が亡くなった時にこそ、神様にご挨拶し、お縋(すが)りしてもいいと思うのです。
小杉社長: 私は今、地元小学校の同窓会長をしていますが、将来地元に残る子どもは三分の一。長男しか残らず、女性はほとんどお嫁さんに行ってしまう。
だから、地元に残らない三分の二の人たちに「ここが故郷だ」という思いを持ってもらいたい。そのために、お祭りやバザーなど行事に、商店や町の役員の皆さんがとても力を入れています。自分が育った故郷がどんな小さな町であっても大事に思ってもらいたいですね。
藤原美津子: そうですね。今は出て行ったとしても、同級生たちが「氏神様のところにしめ縄を作ろう」などと声をかければ、離れていても応援したいと思うのではないでしょうか。
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『海外で通じる日本、通じない日本』
小杉社長: 海外からお呼びがあり、いろいろな国に行っていますが、付き合ってみると、みんな人がよくて明るいですね。
藤原美津子: 最初にお会いした時にも、若い人は海外から日本を見た方がいいと言っていただいたのですよね。
小杉社長: 日本人は外に出なさすぎるので、自分や日本の常識が海外に通用すると思っている。けれど、海外は全然違いますよ。
藤原美津子: どういうところが一番通用しないのでしょう。
小杉社長: 日本人は時間に正確ですが、遅刻することに怒っていたら商売にはなりません。例えば、ある国の時間感覚について、私たちは「○○国時間」と言っているのですが、決まった時間に二十~三十分ほど遅れても、その国の人は別になんとも思わない。温和なのですかね?
藤原美津子: 日本人は、山手線などが数分遅れただけで怒ってしまう国民性なのに。
小杉社長: 日本人の感覚自体が真面目すぎるので、もう少し余裕を持ってもいいんじゃないかなと思います。日本人の生真面目さに海外の人が合わせようとしたら苦痛でしょう。遅れたのだから仕方ないという感覚ですから。ビジネスマンの中には、しっかりとした人ももちろん沢山いますけれど。
藤原美津子: 小杉社長がお作りになったアゼルバイジャンの日本庭園は、国旗のデザインで、二国間の友好のモチーフとして素晴らしいですね。
小杉社長: 日本庭園とアゼルバイジャンを合致させたものです。モデルは須弥山(しゅみせん。仏教やヒンドゥー教で世界の中心にあると考えられる想像上の山。山頂は神々の世界に達し、周囲は幾重もの山岳や海に囲まれているという)の庭なので、三尊石は、釈迦如来、普賢菩薩、文殊菩薩などを想定して石を配しています。
釈迦如来というのは、ここの国で言えば大統領だと説明したら、大統領が釈迦如来に見立てた石まで上がっていきました。
日本では釈迦如来が国民を見守り、アゼルバイジャンでは大統領が国民を守っている。「ここで作ったのは大統領が国民を守っている形です」という私の言葉を大統領が理解してくださったというわけです。