第六話 結婚前に一緒に暮らすことは、良くないのですか(質問に答えて)
出来れば、結婚式を挙げてから、一緒に暮らした方がよいです。 なぜかというと、一つには、それが「けじめ」だから。日本人は、けじめをとても大事にします。そしてもう一つは、女性の親の気持ちを大事して頂きたいからです。 私達は、ついつい自分一人の力で大きくなったように思ってしまいますし、結婚前は、好きな人以外は何も見えなくなってしまうかもしれませんが、少しだけ自分を何よりも大切にしてくれた人のことを見てほしいのです。 娘を育てるときの、こんなエピソードがあります。 あるお父さんは、娘が塾などで遅くなるときには、たとえ翌朝どんなに早い仕事を抱えていても、必ず駅まで迎えに行ったそうです。「大事な娘に何かあったら大変だ」そんな気持ちで行かずにはいられなかったのでしょう。 私の母も、塾の帰りには、必ずバス停まで迎えに来てくれました。バス停から、家までの間には、小学校と中学校が向かいあっていて、昼間の賑やかさとは裏腹に、夜になると本当にひと気の無くなるところがありました。 大人になってから、「あのときは、いつも小石を二つ三つ拾って、ポケットに入れていたのよ。もしおかしな人に、お前が襲われそうになった時には、その石を投げつけて、相手にむしゃぶりついて、その間に『お前は逃げなさい!』といって、助けるつもりだったのよ。もちろん相手が何人もいたり、とてもお母さんの力などでは、太刀打ちできないかもしれないけれど、お母さんが殺されたとしてもお前を守ろう、そんな気持ちで迎えに行っていたのよ。」と話してくれたことがあります。 子供は、特に娘は「目の中に入れても痛くない」という言葉があるように、親にとっては、命を投げ出しても惜しくないと思ってくれるほどかわいいもの。 かつての流行った歌謡曲に「嫁に、来る日が来なけりゃいいと~」という父親の心を歌った歌がありました。これだけかわいがっている娘も、いつの日かどこかの男が奪い去っていく・・それが娘の幸せと思っても、父親としては本当に辛いものです。 その娘を嫁がせるのです。 だから嫁ぐ日に「お父さん、お母さん、長い間お世話になりました」と手をついて今までのお礼を言って、人生の門出を「感謝の気持ちを添えて」出発しましょう。 そして結婚すれば、子供が生まれます。子供が大きくなって、結婚するときに、きっとそれがお手本になるはず。子供は見ていないようでも、親の姿を見ているし、そのまま写し出してくる・・ものです。 「一日も早く好きな人と暮らしたい」「もう結婚するのだからいいじゃないか」といいたい気持ちは分かりますが、結婚してからの人生の方が長いのです。