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第五話 現代版の花嫁道具 母の味を受け継ぐ

遠距離恋愛を成就させて、ついに結婚することになった百合さん(仮名)。 お祝いの言葉と共に「結婚前に何かお母さんの味を受け継いで、それを嫁入り道具の一つにして嫁いだらいいですね」とお伝えしたのですが、そうはいっても結婚前の忙しい毎日です。何ヶ月も何もしないまま、いよいよ結婚一ヶ月前になってしまいました。 結婚したら実家とは遠く離れてしまいます。「お母さんから、直接料理を教えて貰えるのは、今しかない」と気がついた百合さんは、その時になって「お母さんの味を何か絶対に持って嫁ごう」と思い立ちました。 でもあと一ヶ月しかないのだから、何品も覚えるのは無理です。 「お母さんの味を何か一つ覚えるとしたら、何が良いと思う?」と姉妹たちに聞いてみました。「ウーン、グラタンは?」「唐揚げは?」いろいろな意見が出ましたが、そんな中で、「お母さんの料理はたくさんあるけれど、大根と里芋と人参とイカの煮物にしよう。」と百合さんは決めました。 それから、三週間近く、毎日のようにその煮物を作り、家族に試食して貰いました。同じものばかり毎日食べさせられた家族は、段々箸をつけてくれなくなってしまったのですが、一番上のお姉さんだけは、「うん。かなりお母さんの味に近づいたようよ」「もっと肩の力を抜いて作ったら・・」と毎日食べ続けてくれて、励ましてくれたそうです。 最後には、みんなからも「うん、この味ならお母さんの味!」と言ってもらえるようになりました。 百合さんは、お母さんは、私達が子供の頃にも、ぼろぼろのオーブンで手作りのケーキを作ってくれたり、いつもいつも笑顔でいてくれた・・私もそんなお母さんのようになりたい・・といって嫁いでいきました。

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